ロボット手術(daVinci手術支援システム)
兵庫医科大学病院では2012年12月よりロボット手術(daVinci手術支援システム)を開始しました。
近年、多くの手術が解放手術から侵襲の少ない腹腔鏡手術に移行しています。しかし、腹腔鏡手術はポートという穴を通して鉗子のみで手術をするため、開腹手術のような緻密な作業ができませんでした。ロボット手術では、ポートを通して体の中に人間の手と同じような動きをするロボットアームを挿入して手術を行います。そのため腹腔鏡手術でありながら、開腹手術のような緻密な作業が可能となりました。
術式 | 保険適応 | 費用 | 入院期間 |
---|---|---|---|
前立腺悪性腫瘍手術 | あり | 保険適応 | 約14日 |
腎•尿管悪性腫瘍手術 | あり | 保険適応 | 約14日 |
腎盂形成術 | あり | 保険適応 | 約7日 |
ロボット支援根治的前立腺摘除術
転移を伴わない早期の前立腺癌(病期A,B)が対象で、手術により前立腺を切り取ってとって膀胱と尿道をつなぎます。兵庫医科大学では2012年よりロボット支援下根治的前立腺摘除術を行っており、多くの患者様が治療を受けられています。高画質3D画像により拡大された良好な視野で、繊細に動くロボット鉗子により緻密な手術ができるようになったことで、従来行われていた開腹手術や腹腔鏡手術よりも出血量も少なくほとんどの症例で輸血は必要ありません。また術後合併症としての腹圧性尿失禁もごく軽度で、通常であれば術後1ヶ月後にはパッド1枚で普通の生活が可能です。がんの広がり方によっては勃起神経も一緒に切除することが必要ですが、早期がんに対しては勃起神経を温存することも可能です。
ロボット支援腎部分切除術
転移を伴わない腎がんの治療は外科的切除が基本です。以前は根治的腎摘除術によって患側の腎臓をすべて摘除することが一般的でした。しかし、最近では直径4cm以下の比較的小さな腎がんに対しては腫瘍のみを切除する腎部分切除術を施行し、患側の腎機能の温存することが一般的です。
当院では2002年から腹腔鏡下根治的腎摘除術、2006年から腹腔鏡下腎部分切除術を導入しています。ロボットによる腎部分切除術は2016年4月より保険適応となっています。
ロボット支援手術では、腹腔鏡手術と同じようにポートを挿入して手術を施行しますが、3D画像による良好な視野と自由な操作性により、腹腔鏡手術では困難であった手技がより安全で確実に施行できます。そのため、腎部分切除では阻血時間が大幅に短縮され、術後の合併症も少なくなっています。また、腹腔鏡手術では困難であった位置や大きさの腫瘍でも、ロボット支援手術では腎部分切除の適応になります。腎部分切除の適応については担当医にお尋ねください。
術式による長所と短所
ロボット手術 | 開腹手術 | 腹腔鏡手術 | |
---|---|---|---|
傷が小さい (5〜6 ポート) |
○ | × | ○ |
比較的大きな腫瘍 にも適応 |
○ | ○ | × |
どこの腫瘍位置 でも可能 |
○ | ○ | × |
阻血時間が短い | ○ | ○ | △ |
ロボット支援腎盂形成術
腎盂尿管移行部狭窄症は腎の尿を一時的に集める「腎盂」と尿を膀胱まで運ぶ「尿管」のつなぎ目が通常よりも狭い(「狭窄」)ために、腎盂が拡張した水腎症という状態になり、腎臓の機能が落ちたり腰背部が痛くなったりする疾患です。根治のためには狭いところを切除して腎盂と尿管をつなぎなおす「腎盂形成術」という手術が行われます。
乳児期には約3cm前後の切開による開腹手術が可能ですが、体型が大きくなると大きな切開が必要です。腹腔鏡手術による腎盂形成は体への負担が軽く、当院では2013年から2歳以上の方を対象に行ってきており96%(26/27例)で成功しています。しかし、数ミリの幅しかない尿管を腹腔鏡で縫合するのは容易な手術ではありませんでした。そのためより安全で確実な手術方法として、2015年にロボット支援腎盂形成術を県内で初めて施行しましした。2020年に保険適応になってからは、2歳以上の小児から成人までほとんどの年代で第一選択となっており、2024年4月現在100%(39/39例)の成功率です。
症例により創部をベルトラインより下におくことで安全性と外見を両立する手術方法を採用しています(下図)。
腎盂尿管移行部狭窄症は手術を必要としないケースもあれば、手術しないと腎臓の障害がすすむケースもあり、診断の段階から経験のある施設で診療すべき疾患です。当院は小児から成人まで対応可能ですので、まず担当医とご相談ください。